新聞・テレビの猛反発は必至 総務相「新聞社の放送支配禁止」表明(J-CASTニュース)

 「プレス(新聞)と放送が密接に結びついて言論を一色にしてしまえば、多様性や批判が生まれない」。原口一博総務相は2010年1月14日、新聞社が放送局を支配する「クロスオーナーシップ」を禁止する法律を制定したいという考えを明らかにした。

 現在は「日本テレビ=読売新聞グループ」というように新聞とテレビが系列化しているが、先進国では異例で「言論の多様化を阻んでいる」との批判がある。もし実現すればメディアの大改革につながるが、オールドメディアの激しい反発が予想される。

■「クロスメディアの禁止を法文化したい」

 原口総務相は1月14日、東京・有楽町の外国特派員協会で開かれた講演で、新聞・テレビの「クロスオーナーシップ」に関する記者の質問に次のように答えた。

  「マスメディア集中排除原則、これを法案化します。そして、クロスメディアの禁止、つまり、プレス(新聞)と放送が密接に結びついて、言論を一色にしてしまえば、そこには多様性も、民主主義の基である批判も生まれないわけであります。これを法文化したいと考えています」

 日本では、放送局の寡占化を防ぐ「マスメディア集中排除原則」が総務省令で定められている。原口総務相はすでに、この原則を法律レベルに高める考えを記者会見などで示している。法案の具体的な内容はまだ明らかでないが、特派員協会の会見で、クロスオーナーシップの禁止を法案に盛り込む意向を表明した。

 欧米の先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェックを確保するため、新聞社が放送局を系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が設けられている。日本でも、総務省令(放送局に係る表現の自由享有基準)にクロスオーナーシップを制限する規定があるが、一つの地域でテレビ・ラジオ・新聞のすべてを独占的に保有するという「実際にはありえないケース」(岩崎貞明・メディア総合研究所事務局長)を禁止しているにすぎない。

 その結果、読売新聞と日本テレビ、朝日新聞とテレビ朝日といった新聞とテレビの系列化が進み、テレビが新聞の再販問題を一切報じないことなどに見られるようにメディア相互のチェック機能が働かず、新聞もテレビも同じようなニュースを流すという弊害が生じている。原口総務相が表明した「クロスオーナーシップ禁止」の法制化は、このようなメディアの歪んだ状態を正す可能性をもつ。

■「言論が一色になることはジャーナリズムの世界ではあってはならない」

 だが、クロスオーナーシップで利益を得てきた新聞・テレビからは激しい反発が起こることが予想される。テレビ朝日やMXテレビで働いた経験をもつ独立系映像メディア「アワープラネット・ティービー」の白石草代表は

  「問題はどこまで本格的に踏み込んで規制をするか。欧米のようなクロスオーナーシップ禁止が実現すれば放送業界も大きく変わるだろうが、新聞業界の反発はすごいだろう。現在はまだ大騒ぎになっていないので、騒ぎにならないうちに民放連(会長は朝日新聞出身)がつぶそうとするのではないか」

と推測する。新聞業界の抵抗を暗示するように、新聞・テレビの主要メディアはどこも、原口総務相の「クロスオーナーシップ禁止」の法制化に関する表明を報道していない。講演翌日の1月15日には総務省で定例会見が開かれたが、新聞やテレビの記者からはクロスオーナーシップについての質問は出なかった。つまり、黙殺したのだ。

 唯一、ネットメディア「ビデオニュース・ドットコム」の竹内梓カメラマンが質問すると、原口総務相は

  「一つの大きな資本体がテレビも新聞もラジオもとると、言論が一色になる。そういうことはジャーナリズムの世界ではあってはならないと伝えられているわけで、いろんな国が出資規制を置いている。そのことについては、私たちもしっかりと、国会でも議論いただいている。その議論をふまえた一定の結論を出していくということを言ったわけです。主要メディアが報じなかったかどうかは、私のコメントできるところではありません」

とクロスオーナーシップ禁止の目的について、改めて説明した。実は、前日の特派員協会での質疑応答で原口総務相の発言を引き出したのも、ビデオニュース・ドットコムを運営する神保哲生さんだ。神保さんは

  「原口さんの回答の全体的な印象として『既得権益を壊さないといけない』という強い意志が感じられた。政治家がメディアに手をつっこむのはリスクが大きいが、これはぜひやりたいと考えていると思う。ポイントは、このような問題があるという認識が世論に広がるかどうかだ。新聞・テレビがまったく報じようとしないなかで、どのように世論形成していくかが課題となるだろう」

と話している。


■関連記事
テレビがなぜ「新聞再販」報じないか 民主新政権のマスコミ政策に注目 /(連載「テレビ崩壊」第10回<最終回>/ビデオジャーナリスト・神保哲生さんに聞く ) : 2009/09/04
フリーやネットの記者が張り切る 総務大臣会見の開放スタート : 2010/01/05
総務省「政務三役会議」オープン化 インターネット中継などで公開 : 2009/12/22
損保大手3メガ体制に 規模拡大も顧客還元進まず : 2010/01/04
小沢疑惑を「国民は理解」? 選挙結果が意味するもの : 2010/01/14

千葉法相が参政権で「議員立法が適切」(産経新聞)
<鉄分豊富なイネ>貧血症回復に効果 東大などが開発(毎日新聞)
子どもの相談体制強化へ=官民推進会議を初開催−文科省(時事通信)
2億8千万円の寄付偽装=05年報告書に虚偽記載−陸山会の土地購入問題(時事通信)
<阪神大震災>発生から15年の朝 さまざまに鎮魂の祈り(毎日新聞)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。